スポーツ弁護士田中尚幸のblog

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【スポーツ仲裁】JSAA-AP-2020-005 バドミントンS/Jリーグ加盟不認可の件

1 事案の概要
バドミントンS/JリーグⅠに参加していてたチームBの経営母体が経営破綻したため、別の会社が経営母体を引き継ぎ、選手を加える等してチーム名をXに変更してS/Jリーグに参加しようとしたところ、S/Jリーグへの加盟が認られなかった。
そこで、当該の不認可を取り消すべきであるとして、スポーツ仲裁が申し立てられた。

2 当事者
申立人:2019年にS/JリーグⅠに所属していたチームBを承継したチームX
被申立人:日本バドミントン協会

3 結論
チームXのS/Jリーグ加盟を認めないとの決定を取り消す

4 争点
第1 本案前の争点
(1) 2020 年の S/J リーグⅠ~Ⅲが全試合中止となっていることとの関係で、申立人の請求を認めるべき法的利益は存在するか。
(2) 本仲裁手続において、被申立人に対し新たな決定を求めることをできるか。
第2 本案の争点
(1) 申立人とバドミントンチーム B の同一性
(2) 被申立人が申立人の加盟を認めることについて裁量権を有するか。
(3) 被申立人が以下の理由により申立人の加盟を認めなかったことは「著しく合理性を欠く場合」にあたるか。
ア 同一事業所で複数チームの出場は認めないとのルールに反すること
イ S/J リーグ委員会での審議後にプレスリリースすべきところ、その前にS/J リーグⅠ~Ⅲでの出場を了承されていないのに間違った発表がなされたこと
ウ 選手との雇用契約期間が 2021 年 12 月までとされていること
エ バドミントンチーム B の退会届の提出がなく、経営破綻やチーム移譲の経緯や時期の説明がないこと
(4) 被申立人の重大な手続違反の有無
(5) その他

5 内容
争点はかなり多岐にわたりますが、実態としては、S/Jリーグ側での正式な手続がなされる前の記者会見でチームXが「S/Jリーグに質問できるのか」と問われた際に「そうですね」と回答した点にS/Jリーグ側が不満をもったことから、こじれてしまったものと思われる。
公開されている仲裁判断の内容からだけでは不明な点があるが、経営母体が破綻した場合の承継の仕方について、事前に明確なルールを定めておく必要があります。